2016年コンテンツマーティングの最も重要な5つのトレンド
コンテンツマーケティングは2015年も進化を続け、各ブランドがマーケティング戦略(特にデジタル戦略)を実行するうえで必須の要素になりました。既に多くのブランドが「コンテンツマーケティング」の取り組みの大幅な拡大に向けて準備を整えています。こうしたなか、2015年から学んだ最も重要な2016年のトレンドについて見てみましょう。
1. コンテンツマーケティング専門のエージェンシーが台頭
コンテンツマーケティングは、従来のプッシュ型マーケティングに対し、 プル型マーケティングと呼ばれ、中長期的な取り組みが必要です。簡単に始められるものではなく、規模の拡大も一筋縄ではいきません。
しかし、昔ながらのクリエイティブ/メディアエージェンシーの多くは、プッシュ型の広告宣伝戦略に長けており、ビッグアイデアや大規模キャンペーン、製品の販促活動は得意ですが、包括的なコンテンツマーケティング戦略の策定があまり得意でない場合もあります。更に、ランディングページへ誘導するダイレクトレスポンスマーケティングとは違う効果測定方法や、消費者の意識・無意識の行動に関するデータを用いてコンテンツを最適化するということも課題になる場合もあります。
こうした背景もあり、その分野に特化したエージェンシーが2015年増え始め、そのトレンドは2016年も続くと思われます。
真のコンテンツマーケティング戦略は、心に響くストーリーをターゲット消費者に届け、インスピレーションや気づきを与えることが重要で、従来型の広告戦略とは異なります。
優れたコンテンツ戦略は長年にわたって継続が可能であり、単発の大規模キャンペーンとは一線を画します。だからこそ英国WPPの Ogilvy Oneでソーシャルメディアやコンテンツマーケティングの取り組みを率いていたKohlben Vodden や、イスラエル最大手のブランドのマーケティングを指揮していたGalit Ben Simhonは、その安泰な地位を捨て、新たなエージェンシーを立ち上げたのです。
コンテンツマーケティング専門のエージェンシー
Kohlben は英国に StoryScienceを、 Galitはテルアビブに TeamTLV を創設しました。
2001年当時のサーチエージェンシーや2006年頃のソーシャルエージェンシーと同様に、この新たなタイプのエージェンシーが、今後数年のうちに業界の覇者となるでしょう。
こうした新しいタイプのエージェンシーは、以下の独自のスキルセットを持っています。
戦略 – 以下を設定できるマーケティング・戦略担当者
- ブランドコンテンツの全般的なテーマ – 例えば、レッドブルの“Give You Wings”など
- ターゲット層 – 対象者は誰で、何に関心があるのか
- 価値の交換 – ターゲット層の人生にいかにして価値を付加し、その対価としてどのような事業目標を達成できるのか
- 適切なコンテンツ構成 – オウンド(例:ブランドのウェブサイトやブログ、YouTube チャンネル)、ペイド(例:BuzzFeed やNY Times Brand Studioとの提携)、及びアーンド (例:Wall Street Journalでのブランドに関するレビュー記事)
- 成功の定義 – 目標、ベンチマーク、KPI、及びその測定方法
制作 – 以下の能力を備えたジャーナリスト、ストーリーテラー、編集者
- コンテンツを手広く制作する能力 – 社内の専門家やフリーランスのプロフェッショナルのネットワークを活用することで、1年に4件ではなく、1週間や1日に4件のコンテンツを作成
- コンテンツ・マーケティング・プラットフォームの活用 – 専門業者 の知識を駆使して編集チームの規模を更に拡大
技術 – 以下を行う研究開発スタッフ
- 技術プラットフォームの構築と統合化 – コンテンツマネジメントシステム(CMS)や顧管理システム(CRM)、分析システム、及びマーケティング・オートメーション・ソリューション
メディア – コンテンツアンプリフィケーション専門業者
- コンテンツを広く配信し、露出とディスカバリーを増大
- ディスカバリープラットフォーム(Outbrain等)やソーシャルネットワーク(Facebook、 Linkedin、Twitter、Instagram、Tumblr、Pinterest Snapchat)でのキャンペーンの実施や最適化の経験
データ – 以下を行える数字の専門家
- コンテンツプログラムの効果測定
- あらゆる取り組みを最適化(コンテンツ制作、集客、エンゲージメントとシェア、コンバージョン)
2. オウンドコンテンツへの注目が加速
2015年には、ブランド向けに「カスタムパブリッシング」スタジオを提供するパブリッシャーが大幅に増えました。
これはパブリッシャーがコンテンツ制作のプロであることを考えれば当然のことと言えるでしょう。
Buzzfeed、Huffington Post、New York Times、The Atlanticや Quartz は、ブランドと緊密に協力して、ネイティブ/スポンサード/ペイドコンテンツの制作を始めた代表的なパブリッシャーです。
New York Times Paid Posts セクションでは、正攻法の優れた実例を見ることができます。
Future Ready Economiesに掲載されたDellとIntelによるペイドコンテンツ例をご覧ください。
また、 The NY Times と Chartbeatが行った調査では、正しいやり方をすれば、「ペイドコンテンツも、NY Times.com その他のパブリッシャーのウェブサイトのエディトリアルコンテンツと同様に重要なオーディエンスエンゲージメントを生み出せる」ことが分かっています。
ブランドがコンテンツマーケティングへの確信を深めていくにつれて、「借りるより所有する」という思考が高まると思われます。
「所有(オウン)する」ということは、ブランドが自社のオンライン媒体において、高品質で、なおかつおもしろく、教育的で娯楽性もあり、インスピレーションを与えることのできるコンテンツを提供することを意味し、それにより、以下の機会を得ることが可能になります。
- サマリーレポートに加え、関連データを収集
- リターゲティングに向けたオーディエンスのクッキープールの構築
- エンゲージメントとコンバージョンの最適化
- SEO と有機的な共有価値を生み出す
- オーディエンスへの(無料の)メッセージング継続のためのCRM プログラムの構築
- 情報価値の提供からユーティリティバリューの提供への戦略の拡大。例えばAMEX Open Forum の場合、AMEXのコミュニティに登録すると、小規模事業の経営効果を高めるための手法やコラボレーションツールがAMEX から提供されます。
3. コンテンツマーケティングの新たな測定単位: CPE(Cost Per Engagement)
マーケッターがコンテンツへの集客をおこなうために複数のプラットフォーム(Facebook、 Twitter、 Linkedin、 Outbrain、 YouTube等)の活用し始めると、こうしたマーケティングチャンネル間のパフォーマンスを比較する方法が必要になってきます。多くの場合、コンテンツマーケティングの最適化は、トラフィックの獲得とコンテンツとのエンゲージメントをまずは重点におき、進められています。
この場合、エンゲージメントとは何かを理解しないと、次の段階(アクション/コンバージョンに向けたエンゲージメントの最適化)に進むことはできません。
そもそも最適化に関して明確なコンバージョン目標 を持っていないというブランドもあります。
こうしたブランドは、複数のディスカバリーチャンネル/プラットフォームでのマーケティングの成果を、どうすれば効果的に評価できるのでしょうか?
- ブランドは、あるプラットフォームではCPMベース(インプレッション単価:表示回数1,000回あたりの単価)で費用を支払い、バナー広告を掲載するという方法で、トラフィックを購入するかも知れません。
- また別のプラットフォームでは、CPCベース(クリック単価)でコンテンツ費用を支払ったかも知れません。
更に、ユニークユーザーの比率は高いが直帰率も高いというチャンネルもあれば、直帰率は低いものの、セッションあたりのページビューが少ないというチャンネルもあるでしょう。
トラフィックソース間の比較
トラフィックソースの最適化や比較評価を行うための単一のKPIとして、CPEが導入されています。
CPE (Cost Per Engagement: 1エンゲージメントあたりの広告コスト)
CPEは、エンゲージメント指標を組み合わせ、以下のような公式を使って計算します。
(訪問の費用) * (X * [1 / 直帰率]) *( Y * [セッション毎ページビュー]) * (Z * サイト滞在時間) * (T * ユニークユーザー)
X、 Y、 Z 及びT は、この公式において各パフォーマンス指標(以下)に与えることのできる加重です。
- 直帰率
- セッション毎ページビュー
- サイト滞在時間
- ユニークユーザー数
訪問の費用: そのサイトを1回訪問してもらうために要する費用のことです。
- CPMベースのプラットフォーム では、予算 / (インプレッション数 * CTR)となります。
例えば: 予算が10,000ドルでインプレッション単価が10ドルの場合、インプレッション数は1,000,000となります。
クリック率(CTR)が0.2%だった場合、コンテンツのクリック数は 2000なので、 $10,000/2000 = 5ドルとなります。
- CPC ベースのプラットフォームの方が簡単に計算できます。
例えば: 予算が10,000ドルでクリック単価が0.5ドルの場合は、クリック数は20,000となります。
訪問の費用とは、サイトを訪問してもらうために支払ったCPC であり、従って上記のケースでの訪問の費用は、0.5ドルです。
最適化目標を設定するとともに、CPE を計算し、あらゆるトラフィックソースのベンチマーキングを行うことが、ブランドが自社のコンテンツマーケティングの取り組みを改善し、最終的にROIを高めるための鍵になるでしょう。
4. プラットフォーム別にコンテンツをテイラーメード
コンテンツマーケティング の分野では、「フリーサイズ」は存在せず、ブランドマネージャーやチーフコンテンツオフィサー(CCO)は自身のマーケティング知識の高まりとともに、 マーケティングプラットフォームごとに別の切り口が必要であることに気づくでしょう。
同一のコンテンツが、Twitter、 Facebook やPinterestなどの強力なプラットフォームのそれぞれにおいて等しく訴求力を発揮するとは限らないのです。
そのうえ、ブログ向けに制作するコンテンツは、Instagram やSnapchatで発信する種類のコンテンツとは大きく異なります。
(資料: Constant Contact)
コンテンツに関する状況に鑑みて、マーケッターはマーケティングに活用したいプラットフォームを慎重に選び、選択したプラットフォームごとに戦略を立てる必要があります。
以下に、コミュニティの構築や情報の発信に利用できるプラットフォームやフォーラムの例を幾つか挙げます。
- ソーシャルパブリッシング – Pinterest、Instagram、Facebook、Twitter、Tumblr
- ブログパブリッシング – Medium、LinkedIn
- 動画 – Facebook、 YouTube、Vimeo、Snapchat
- ライブストリーミング – Periscope (Twitter)、Meerkat
- Q&A – Quora、reddit、Inbound、GrowthHackers
5. 未来のコンテンツ体験
コンテンツのディカバリーやエンゲージメントの方法は、そう遠くない将来に大きく変わることになるでしょう。
今後、着実に普及が進むと思われる事柄を、以下に幾つか挙げます。
- ニュースの大半(あるいは全て)がモバイルで読まれ、一部は雑誌のホログラムとして投影される
- リアルタイム(Persicope や Snapchat等) やショートフォーム(Vine等) のコンテンツが、日々のコンテンツ消費において、より多くの比率を占めるようになる
- バーチャルリアリティ用のヘッドセットにより、テキストや動画を超えたリアルなコンテンツ体験ができるようになる
このような消費トレンドの変化によっては、ブランドはより深いコンテンツ体験を組み込んだコンテンツ戦略を採用する必要に迫られることになるでしょう。
こうしたコンテンツ体験の最たるものが、バーチャルリアリティです。
バーチャルリアリティと 360˚ の動画
この US Navy Blue Angels flight の動画を試しに見て、手元のマウスで映像を上下左右に動かしてみてください。
今や全てのスマートフォンやGoPro カメラに360˚の写真・ビデオ撮影機能が付いています。ブランドは、こうした環境にいかに自社のコンテンツ戦略を適応させればよいかを考えるべきです。
Oculus rift は、2016年内に量産品となるでしょう。その結果、 VR 製品がオタクの持ち物から皆の必需品に変わるかも知れません。SamsungとOculusとのコラボ製品(Gear VR) は、既にわずか$99で入手可能なのです。
他にも以下のインスピレーションを与える事例があります。
新たなコンテンツイノベーションのトレンドの常に先頭にいるのがGEです。そのため、GEの SubSea Virtual Reality Tour を見れば、これからのコンテンツマーケティングの動向がわかるはずです。
ネットユーザーのコンテンツへのエンゲージメントを確保するのに、インタラクション以上に優れた方法が他にあるでしょうか?
まとめ
2016年には、以下の取り組みに重点を置くとよいでしょう。
- コンテンツマーケティング専門家の協力をえる – 自社だけで全てを行うことはできないので、(プッシュ型ではなく)プル型のマーケティング専門家と協業する
- 自社のコンテンツを所有する – 自社のコンテンツを作成し、オーディエンスにとって有益なコンテンツ、インスピレーションを与えるコンテンツを提供する
- エンゲージメントの測定方法を改善する – トラフィックの獲得やエンゲージメント確保の取り組み全般に共通して使える指標を作る
- コンテンツをテイラーメード – どのチャンネルを利用するのが最適かを検討しつつ、集客チャンネルそれぞれに適した種類のコンテンツを作成する
- 将来に向けた計画を立てる – 目の前にある将来に向けて、今どのようなコンテンツを作るべきかを考える