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Cookieのない未来: Cookieを使わないターゲティング


近年、人々は自身のデータ保護に関して特に注意するようになっています。そしてテクノロジー企業はそうした動きに耳を傾け、対応を急いでいます。

Googleが2024年にサードパーティCookieを廃止すると発表したことで、業界の流れはCookieのない未来へと変わりつつあります。これまで何度か遅れはあったものの、その日はもうすぐそこまで来ています。 

(追記:2024年4月23日、GoogleはChromeにおけるサードパーティCookieの廃止を2025年に延期することを発表しました)

この状況はマーケターや広告主に、これまでの私たちのやり方を大きく変える必要があると告げているとも言えるでしょう。

Cookieのない未来がマーケターや広告主にとってどのようなものになるのか、そして、私たちはどのようにその変化に対応すればよいのかを考えてみましょう。

マーケターにとってCookieのない未来へ向かうことが意味すること

Cookieはいくつかありますが、すべてのCookieが同じものではありません。

Cookieのない世界では一般的に、ファーストパーティCookie=「良い」、サードパーティCookie=「悪い」ものと言われています。そこでまずは、ファーストパーティCookieとサードパーティCookieの違いを明確にすることから始めましょう。

ファーストパーティCookieとは?

ファーストパーティCookieは、あなたが訪問しているウェブサイトや使用しているアプリによって、デバイスに保存され、次にそのサイトやアプリを再来訪した時に再来訪者であることを識別してくれるため、都度ログインをする必要がなく、実際にはかなり便利なものです。一般的に、ユーザーの行動を追跡したり「スパイ」したりしないため、無害であると考えられています。

サードパーティCookieとは?

サードパーティCookieは、あなたが直接関与しているドメインとは異なるドメインによってデバイスに配置されたトラッキングコードです。例えば、あなたがブログを読んでいて、埋め込まれたYouTubeの動画をクリックした場合、YouTubeはあなたの好みを記録するCookieをあなたのデバイスに保存し、次にそのウェブサイトやアプリにアクセスしたときに同様のコンテンツを表示したり推薦したりします。

サードパーティCookieは、マーケターがさまざまなサイトにわたって人々を追跡し(クロスサイトトラッキング)、詳細なユーザープロファイルを構築することを可能にします。この方法は、広告のエンゲージメントとコンバージョンを高めるのに役立ちます。

Cookieはまた、より詳細な広告の測定とアトリビューションを可能にし、広告主にはるかに正確なROIの数字を提供します。Cookieは、特定の広告がユーザーに表示される回数を制御する「フリークエンシーキャッピング」にも使用できるため、バナーブラインドネスや広告疲れを軽減することができます。

なぜCookieのない未来が推進されているのか?

オンラインデータのプライバシーとセキュリティに関する懸念が、Cookieに対する態度の変化を促進しています。

Cookieそれ自体は、ファーストパーティであろうとサードパーティであろうと、悪意があるものでも有害なものでもありません。しかし、追跡されるという考えは多くのユーザーを不安にさせ、オンライン上での追跡は地域や国によって厳しい法律や規制の対象になっています。

さらに、Cookieは安全ですが、クロスサイト・リクエスト・フォージェリ(CSRF)攻撃やクロスサイト・スクリプティング(XSS)などのセキュリティ侵害のバックドアとして使われることもあります。これらの脆弱性は、サイバー犯罪者が最も安全なウェブサイトを攻撃することを可能にします。

結局、GoogleやMozillaのような大手ウェブブラウザ企業は、収益をもたらす広告主と一般ユーザーの両方にサービスを提供しているため、彼らは広告の効率性とユーザーのプライバシーという相反する要求のバランスをとる、ある種の妥協策を打ち出す必要に迫られているのです。

大手ブラウザはどのようにCookieを削減しているか

大手ウェブブラウザはすべて、Cookieの使用を制限したり、段階的に廃止したり、あるいは完全に排除するための動きを進めています。各ブラウザの取り組みを簡単にまとめてみました。

  • Google:Googleは、ChromeのサードパーティCookieを2024年後半まで段階的に廃止する計画を公表しています。何度か計画の遅れが発表されてきましたが、これは、デジタル広告に不可欠なものから移行することの複雑さを反映した動きです。Privacy Sandboxの開発や、Federated Cohort of Learnings(FLoC)やGoogle Topicsのようなテクノロジーを含むGoogleのイニシアチブは、効果的な広告とユーザーのプライバシーのバランスを取ることを目指しています。
  • Mozilla Firefox: Mozillaは、Total Cookie Protectionの展開により、Firefoxのユーザープライバシーを強化しました。この機能により、Cookieは作成されたサイトに限定され、トラッキング会社が異なるサイト間でユーザーのブラウジングを監視することを防ぎます。
  • Apple Safari: Apple SafariはデフォルトでサードパーティCookieをブロックしています。消費者のプライバシーに対するコミットメントの一環として、Appleはクロスサイトトラッキングを行うサードパーティCookieをブロックするSafariの変更を実施しました。
  • MS Edge:Microsoft Edgeは、デフォルトではサードパーティCookieを含むすべてのCookieを許可しています。ユーザーが希望する場合は、サードパーティCookieをブロックするオプションを用意しています。
  • Opera: Operaブラウザは、ユーザーにサードパーティCookieをブロックするオプションを提供し、ブラウジング体験にさらなるプライバシー対策を追加しています。

Cookieの廃止: 広告の課題 

Cookieの廃止(サードパーティCookieの段階的廃止)の最大の影響は、プログラマティック広告に及ぶと考えられています。

プログラマティック広告は、データとアルゴリズムを使用して広告スペースをリアルタイムで売買する自動化されたプロセスです。そのデータの多くがどこから来ているのか、想像できるのではないでしょうか。・・・・そう、サードパーティCookieです。

Cookieの廃止により、マーケターは主に3つの課題に直面することになります。

  • 異なるウェブサイト間で追跡されるユーザー行動データの減少。これは、正確なターゲティングの低下につながるリスクを含み、ひいては効率の悪い広告配信に繋がります。
  • サードパーティCookieによって提供されるユーザーの興味に関する詳細なデータがなくなること。これにより、パーソナライズされた広告体験を作り出すことはより困難になります。
  • 従来のマーケティング戦略における混乱。サードパーティCookieデータに大きく依存しているマーケターは、データ収集と広告エンゲージメントへのアプローチを再考する必要があります。

Cookieを使わないターゲティングオプション

では、Cookieのない世界で、デジタルマーケターは何をすべきでしょうか?ここでは、サードパーティCookieが消えていくにつれて支持を集めている、Cookieを使わないターゲティングオプションをいくつか紹介します。

ファーストパーティデータ

マーケターはサードパーティデータに頼ることなく、オンライン広告における新しいアプローチを取る必要があります。ほとんどの場合、これは別のソース、つまりファーストパーティデータからデータを収集することを意味します。

ファーストパーティデータとは、ウェブサイトやアプリ、その他のデジタル接点など、オーディエンスとの直接的なインタラクションから収集されるデータのことです。確認すべきことのひとつは、このデータを収集する際、信頼を大切にすることです。そのためには、倫理的なデータ収集方法を守り、プライバシーポリシーを明確にすることです。基本的には、データを共有するかどうかを選択する権限を人々に与えることに尽きます。

十分なデータを収集したら、それを活用してマーケティングアプローチをパーソナライズすることができます。クリエイティブで戦略的なアプローチが効果的です。一般的に、人々は商品のレコメンドやパーソナライズされたユーザー体験を好み、自分のデータがこれらの目的で使用されることには快く同意する傾向にあります。

コンテクスチュアル(コンテキスト)広告

他社が収集したファーストパーティデータを活用し、コンテクスチュアル広告を利用することも可能です。コンテクスチュアル広告とは、ユーザーのデータではなく、広告が表示されるウェブページやアプリのコンテンツ、コンテキストに基づいて広告が配信されることです。

Outbrainのコンテクスチュアル広告ソリューションには、インタレストターゲティングやカテゴリーターゲティングなどのツールがあり、より精度の高い広告ターゲティングが可能です。

さらに、Outbrrainは、コンバージョン・ビッド・ストラテジー(CBS)やエンゲージメント・ビッド・ストラテジー(EBS)のようなファーストパーティデータベースのターゲティングツールを開発しました。CBSは、ネイティブアドネットワークの入札を最適化し、どのコンテンツが長期的にユーザーを魅了し興味を持ってもらえるかを学習するために、コンテキストシグナルを使用します。EBSは、現場の行動データを収集し、ユーザーの意図に沿うことで広告パフォーマンスを向上させます。

行動ターゲティング 

行動ターゲティングは、ブランドのデジタルタッチポイント(ウェブサイト、アプリ、オンラインプラットフォーム)上でのユーザーのインタラクションを分析する戦略です。ユーザーがこれらのプラットフォーム上で実際にどのように行動しているのか、何をクリックしているのか、どのようなコンテンツを消費しているのか、あるいは商品にカーソルを合わせているのかなどを追跡することができます。

例えば、あるユーザーが特定の商品ページに何度もカーソルを合わせているにもかかわらず、一度も購入に至っていないことがわかるとしましょう。行動ターゲティングでは、この情報を武器に、そのユーザーに関連するコンテンツを自動的にターゲティングすることができるのです。

また別の例としては、特定のトピックに関するブログを読んでいるユーザーに対して、その行動に基づいて、そのユーザーの興味に合わせた商品の広告がブログの文脈に沿って表示されたりします。これにより、ユーザーのニーズに沿った押し付けがましくない広告体験が提供され、ユーザーが広告に興味を持ちやすくなるのです。

eメールマーケティングと顧客セグメンテーション 

eメールマーケティングは、オーディエンスに直接アプローチする最も効果的な方法の1つです。調査によると、ターゲットを絞ったメールの平均ROIは、1ドルあたり36ドルです。

開封率やCTRを上げるには、パーソナライズされた意味のあるメールを送る必要があります。インサイトや統計、特別なオファー、ストーリーなど、何らかの価値のあるコンテンツを提供しましょう。説得力のあるCTAも忘れずに。

メールマーケティングを最大限に活用するもう1つの方法は、オーディエンスのセグメンテーションです。セグメンテーションとは、興味や属性、購入履歴などに基づいてオーディエンスをグループ分けすることです。よりパーソナライズされたコンテンツを作成し、エンゲージメントを高めることができます。

AIと機械学習

新しいAIや機械学習マーケティングツールは、次々とリリースされています。これらのツールは、ファーストパーティデータを過去とリアルタイムで選別し、マーケティングインサイトを得るのに役立ちます。機械学習は、すぐにはわからないユーザーの行動パターンを見つけるのにも効果を発揮します。

一部のツールは、個々のトラッキングに依存することなく、生成されたインサイトを使って将来の行動を予測することができます。これにより、自動化された広告はまったく新しいレベルに到達し、よりクリエイティブで革新的な広告アイデアに時間を割くことができます。

デジタルマーケティング戦略の将来性

Cookieのない未来の課題への対処法としては、とにかく準備を整えることが重要です。以下のアクションは、デジタルマーケティング活動の将来性を高めるのに役立つと思います。ぜひご参考になさってください。

  • ファーストパーティデータ収集に投資する: ウェブサイト、アプリ、またはCRMシステムでユーザーデータ収集を有効にすることから始めましょう。メールアドレス、嗜好、閲覧行動などのデータを収集します。ユーザーの完全な同意を得るよう、プライバシーについて完全な透明性を確保しましょう。
  • コンテクスチュアル広告を利用する: ユーザーの閲覧履歴ではなく、ウェブページのコンテンツに基づいて広告を配信します。この方法は、ユーザーのプライバシーを侵害することなく、広告の関連性を保つことができます。
  • 機械学習とAIをインサイトに活用する: 顧客の行動を洞察することで、トレンドをより効果的に予測することができます。
  • 顧客との関係を強化する: パーソナライズされたコミュニケーション、ロイヤリティプログラムなど魅力的なコンテンツを活用しましょう。ユーザーにニュースレターの購読やアンケートへの参加を依頼し、貴重なファーストパーティデータを取得することもできます。
  • マーケティングチャネルを多様化する: ひとつのデジタルマーケティングソリューションだけに頼らずに、SEO、コンテンツマーケティング、ソーシャルメディア、インフルエンサーとの提携などを組み合わせて展開しましょう。そうすることで、リスクを減らすだけでなく、リーチを広げることができます。
  • UXの向上:ポジティブなユーザー体験を提供してくれるサイトでは、より多くの時間を過ごしたいと感じるユーザーが多くなります。そして、ファーストパーティターゲティングのためのデータ収集量も増加します。
  • プライバシーに配慮したターゲティングソリューションを検討する: 大手プラットフォームでは、ユーザーのプライバシーに配慮したプロダクトの開発も進められています。よく検証した上で、このようなプロダクトの利用を検討していくことも、一つの手段となります。
  • コンテンツマーケティングに投資する: 質の高いコンテンツは、理想的なユーザーを惹きつけます。また、ユーザーがコンテンツにアクションすることで、ファーストパーティデータを収集することができる、優れた方法とも言えます。
  • テスト&学習のアプローチ: 新しいツールや戦略、テクノロジーを定期的に試験的に採用して見ましょう。常にユーザーやビジネス目標に最適なものを取り入れるような姿勢が大切です。

情報収集とコンプライアンス、プライバシーに関する規制や業界の変化について、常に最新の情報を入手するように心がけましょう。GDPRやCCPAのような法律に確実に準拠し、信頼を築いていくことが重要です。

*このブログは、2024年2月にOutbrain Inc. から発表されたものを意訳したものです。